月影の下で【2019年】

ドラマ

評価・・・78点

テキパキと物語が進み、引き込まれます。おすすめ。

あらすじ

あまり裕福ではないけど、愛する妻と慎ましい生活。もうすぐ子供が生まれそう!今は制服警官だけど、昇進して刑事になって家族を幸せにするぞ。そんな平凡警官な俺が勇み足で連続殺人事件に首を突っ込んだばっかりに人生が大きく狂っていく・・・連続殺人犯は謎だらけ。俺は一人でもその謎を解明してやる。

監督・キャスト

監督:ジム・ミックル

ホラーが主戦場の監督。Netflixドラマ「スイートトゥース」の監督も担当。

キャスト

ボイド・ホルブルック

主人公。「ゴーン・ガール」では主人公からモーテルで金を強奪するチンピラ役で出演。

クレオパトラ・コールマン

謎の連続殺人の容疑者役。

マイケル・C・ホール

主人公の義理の兄役。TVシリーズ「デクスター」では主人公の警察官かつシリアルキラーを好演。

感想(※以下、ネタバレあり)

冒頭、「2024年」とテロップが映し出されたあと、死んでしまったかのような街の風景が流れる。人は誰もいない。これだけで、ああ、近未来の話なんだな、人類は滅んでしまったんだな・・・と一気に物語に吸い込まれる。この入りは好きだ。

そこから物語は「1988年」に遡る。その風景は人々が普通に暮らす、僕らの知っている「街」だ。映画のなかの「2024年」との落差を映し出す。

その「1988年」に暮らすコックさん、バスの運転手、ピアニストと全く関連性のない人々が全く同じ方法で殺される場面で物語が動きだす。1988年と2024年の繋がりを暗示させる仕掛け。

そこから9年ごとに起きる事件とその謎を解くべく立ち向かう男の話となっていくわけだが、彼は制服警官、刑事、私立探偵、ホームレスと暮らしぶりが変わり、風貌も変わり、私立探偵のときにはアル中になっている描写もある。彼の立場や生活の変化についても、出来る限り映像で説明する仕掛けとなっており、小気味よくテンポよく、物語の主軸である「謎の解明」についてのスピード感を損なうことはない。

例をあげると、主人公のアル中については、セリフでくどくど説明するのではなく、接客用に出されたコーヒーにこっそりウイスキーを入れて飲むシーンを映像的説明として挟み込むことで片付けている。(人と会っているのに、アルコールが我慢できないというのは極度のアル中だ)

また、9年ごとの事件はすべて娘の誕生日と設定することで、娘の成長で時間の経過を説明し、娘との関係を描くことで男の置かれている環境について説明するかたちとなっているのもうまい。

ラストシーンは「過去を取り戻すため」に未来を変えようとする男と「未来を取り戻すため」に過去を変えようとする女が実は一本の線でつながっており、この男と女は実は祖父と孫の関係にあり、俯瞰してみると同じ目的のため戦っていたという事実、そして「未来を取り戻すため」の戦いは「過去を取り戻すため」にあがいた男を起点とするしかない、という着地が素晴らしかった。

そして「未来を取り戻すため」の戦いは栄光なき戦いであり、それは孫を失うことでしか成し遂げられないという悲劇の幕開けであり、そして変えられない過去でもある。

生まれたばかりの孫を抱く男の気持ちを考えると切ない。

それまでの娘とのシーンは物語に深みをもたせるため、あるいは時間の経過を説明するための小道具としての役割かと思っていたが、ラストシーンに深みをもたせるための非常に重要なパートだったことがここでわかる。

月の満ち欠けが関係しているのなら、太陽暦での娘の誕生日は関係ないんじゃ?とか・・・

孫が死ぬことが世界を救うこととは直接関係しているわけではないから、地下鉄での格闘には注意しなよ、と言い含めておけなかったのか?とか・・・

遠隔操作で人が殺せるんだから、装置を打ち込んですぐに起動せずに、もう少し余裕をもって殺せばいいのに、とか・・・

そもそもミッションが成功したのなら、世界を破壊から救うという過去にいくべき理由が消えて、ミッション自体も消えて孫も死ななくて済むのでは?とか・・・

数々のクエスチョンマークが残るがそれはそれ。お酒を飲みながら気の合う仲間とその矛盾点について考察したり、語り合うのもまた楽しいものです。良作。

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