評価・・・28点
キャッチコピー
・先読み不能ミステリー
・この恐怖、美味ナリ
監督:本木克英
キャスト
- 水上恒司(主人公)
- 山下美月(妻)
- 宮舘涼太(ワカルマイ!)
- 豊田裕大(弟)
感想(※以下、ネタバレあり)
先日、タイ出張から戻った同僚からお土産をもらった。

「おや?タイのリップクリームかい?」とそれを手に取りキャップを外すと、先端に穴が空いている。
噛みつきフェレット捕獲ハンドブック_ペットとの日々と仕事の愚痴

「鼻に突っ込んで大きく息を吸い込んでみな」と言われるがママに、突っ込んで吸い込む。
鼻にミントの香りが広がり、なんとも清々しい。
「いったい、これは何だい?」
「ヤードムといって、タイ人の必需品さ」
詳しく聞いてみると、ヤードムとは、ヤーは嗅ぐ、ドムは薬で、嗅ぎ薬。タイ人はみなこれをポケットに忍ばせて、しょっちゅうクンクンスースーしているようだ。
最初は「馬鹿馬鹿しいし、はしたない」と思っていたが、これがなかなかクセになる。
鼻を噛んだ後に、突っ込んでスー。口寂しいときに、突っ込んでスー。気分転換に突っ込んでスー。
今では常にポケットに忍ばせる立派な愛用者となった。
閑話休題。
ヤードムの話は置いておいて、映画「火喰鳥を、喰う」を劇場にて鑑賞してきたので、その感想だ。
公開2日目の土曜日ながら、朝一番の回であったせいか、客の入りは微妙。3割くらいか。
いつも通り、フライヤー以外の予備知識なしの特攻スタイルにて鑑賞。
小説が原作とのこと。原作未見。キャッチコピーとその題名から京極堂シリーズのように怪異とサスペンスが混じった「関口くん、この世に不思議なことなど何もないのだよ」系かなと勝手な想像しながらのワクワクしながらの開幕。
ある故人の情報のみが墓石から抉り取られるという不穏な出来事から物語はスタート。蝉の声がやかましい。茅葺屋根と引き戸の古民家。夏の田舎が舞台のようだ。

この出だしは最高!不穏にして最強!
恩讐に満ちた人間関係と過去が濃厚に影を落とす「今」を抱える田舎の負の部分が短い映像だけで表現され、「京極堂というより、これは横溝か?」と私のボルテージは一気にアップ。

のんびりゆったり、深く腰掛けていたのを姿勢を正して、前のめりとなった。
しかし、私の前のめりは残念ながら、序盤のみ。そこから作品のクオリティは下降線を描き、同時に私のボルテージも急降下、音の出ない心の舌打ちの回数が止まらない。
まずもって、あまりに演技が稚拙すぎる。これは演者の技量が不足しているのか、あるいは監督の指導が行き届いていないからなのかは、わからない。
素人の私が言えるのは、「秋だからって文化祭レベルのもので金とってんじゃねーぞ」ということだけだ。
弟思いの姉が弟の存在を忘れてしまうという衝撃の場面。とうとう我々の現実が別の現実に侵食され始めたという転換点をあらわす重要な場面で、腹話術の人形みたいに「私に…弟が…いたと…?」って、ここで棒読みはダメだろ、これじゃあ京極堂じゃなくて、いっこく堂だよ、なんだコレ。

たまらず、ヤードムを鼻に突っ込んでスーからのハー。
異世界的な世界で、黒幕がその心境を吐露する場面で、「俺たちの孤独をワカルマイ!(ワカルマイ…ワカルマイ…ワカルマイ…)」って、クソだせえ。セリフも、その言い方もダサいけど、エコーが強烈にダサい。演技がたどたどしくて、共感できない。ワカルマイ!って。知るか!わからんわい。

おめえらが異次元世界で遊んでいる間に、我々サラリーマンは苦悩に満ちた現実世界で苦しんでるっつーの。ワカルマイ!
そもそも、この北斗というキャラクターはおそらく原作ではクセの強いアクの強い、しかし卓越した能力を持つ存在感抜群の人物として描かれているのではなかろうか?
彼の持つ特殊な能力から頼りになりそうな反面、本当に信頼していいのだろうか?という疑念を抱かせる、物語に欠かすことのできない人物のはずだ。
原作未見の私でも、想像できる。しかし、プロである監督とプロである演者がそろって消化しきれていないように感じる。
敵なのか味方なのか?頼っていいのか距離を取った方がいいのか?常に揺らぐ立ち位置がこの物語の肝だ。
それが、ワカルマイ(ワカルマイ…ワカルマイ…マイ…)、だもの。
あまりに、稚拙すぎる。
もう一発、ヤードムを鼻の奥まで押し込んでスーからのハー、スーからのハー。
あと、弟も大概だ。侵食された現実と立ち向かう主人公に、「兄さん、シューチャクです!シューチャク!」って、いらんアドバイスを棒読みで言われても、主人公を困惑させる以上に観客が困惑だよ。

ヤードムをスーからのハー、スーからのハー、もう一回スーからのハーーー!
あと演技以外も色々ダサい。
ラスト近辺で老人の顔が鳥になるのが、ダサい。
火に包まれる車のシーンが、やっつけ感丸出しで、志の低さを露呈してて、ダサい。
あとなんで、邦画の絶望の演技はあまねく頭を抱えて、「うおー」なのかね?現実世界でそんな奴見たことねーよ。
お前は経験不足でそこまでの絶望を知るまい、だからピンとこないのだと言われれば反論できないのだが、やっぱおかしいよ、頭抱えてオーマイガッって欧米か!
冒頭、感じた横溝ミステリー感はなんだったのか?台無しだよ。オーマイガッ!
あと、ラストが秒速5センチメートルみたいでダサくて、リアルに舌打ちしそうで、我慢するのに必死でした。

まとめ
稚拙な演技と志の低い演出が土台となったマルチバースサーガ。
観る価値なし。
もしどうしても観るのならば、ヤードム必携です。
