首【2023年】武とたけしの集大成。。。ではあるが、今年最大級の期待外れ。

映画

評価・・・82点

あらすじ

北野武流本能寺の変。

監督:北野武

キャスト

  • 北野武(豊臣秀吉)
  • 西島秀俊(明智光秀)
  • 加瀬亮(織田信長)
  • 中村獅童(茂助)
  • 荒木村重(遠藤憲一)
  • 大森南朋(羽柴秀長)
  • 浅野忠信(黒田官兵衛)
  • 岸部一徳(千利休)
  • 小林薫(徳川家康)
  • 木村祐一(新左衛門)

感想(ネタバレ特になし)

私は北野映画が大好きです。

「その男、凶暴につき」の斬新さ。「キッズ・リターン」の切なさ。「ソナチネ」の儚さ。「アウトレイジ」シリーズの圧巻さ。

その映画群の奥底には無常感や諦めがシニカルに横たわり、それが鑑賞後長期に渡って我々の脳髄に重低音を響かせてくれます。

細かなストーリーやセリフを忘れてしまっても、その無常感は、日常生活を営む我々の脳裏でずっと重低音を奏で続け、ふとした時に思い出してしまうほどの影響力を持っています。

反面、北野武のなかには、合わせ鏡のように芸人ビートたけしが存在し、時折照れ隠しのようにそれが映画に現れることがあります。

それが北野映画に多様性をもたらしているとも言えますが、私は圧倒的に可能な限り意図的に芸人ビートたけしを抑え込んだ作品群、つまり私の脳裏を重低音で満たしてくれる作品群が好きです。

さて、今回の「首」はどうだったのか?

台湾出張にいった同僚がお土産で買ってきてくれたヌガーをカバンに忍ばせ、劇場に行ってまいりました。

ホットコーヒーとともに大好きなヌガーを食べながら、予告編を見るのもオツなもの。いつもなら鬱陶しいNo More 映画泥棒!も愉快に感じます。このヌガーにはマカデミアナッツが入っており、濃厚ながらも単調になりがちなヌガーにアクセントを与えてくれて、ほんとうにいい仕事をしてくれています。ホットコーヒーと一緒にいただくと口のなかで混ざり合い極上のコーヒー牛乳のような。。。

失礼致しました。ヌガーのレビューではなく、「首」のレビューをいたします。

今回の作品は、北野武とビートたけしの融合、いわば、北野映画の集大成といえる作品でした。

それが成功だったのか失敗だったのかは、個人差があると思いますが、私にとっては正直残念な作品でした。

緊迫感のある映像が続くと思いきや、もっとも悪いタイミングで”ビートたけし”がひょっこり顔をのぞかせ、物語の推進力を奪ってしまっているように感じました。

特に後半になるにつれて、”ビートたけし”感が強くなり、作品が本来内在している無常感や首にこだわる男たちの哀しさが目立たなく感じられました。

アクセントとしての”ビートたけし”は大歓迎ですが、それが全面にでるようでは、それはアクセントではありません。嫌になるくらい大量のマカデミアナッツが入ったヌガーはヌガーではありません。ただのマカデミアナッツです。

照れ隠しとして時折にじみ出るビートたけしは映画に独特の色気と緩急を与え、それが北野映画に大衆性を残し、ある一線を踏み越えない徳俵になっていましたが、今回の北野映画に全面的に出演したビートたけしはいただけませんでした。

私にとっての北野武とビートたけしの集大成は「ソナチネ」です。

同作のトントン相撲のシーンはクスッとした笑いがありながらも、男たちの悲惨な末路までのモラトリアムにすぎないことを暗示する名シーン。これこそが武と”たけし”のもっとも理想的な配合による最も美しい融合であるといえるでしょう。

あとは映画を「ファッキンジャップくらいわかるよ、バカヤロー!」とか「俺たちもう終わっちゃったのかな」とか「メーワクもハローワークもあるかい!」といった声に出して読みたい日本語がなかったのも残念かな。

といっても、実力派俳優が勢ぞろいし、制作陣の全員の良い作品を作り上げようという強い意気込みが画面越しにも伝わり、その熱量だけで2時間を超える長尺を一気に走り切る力をもった作品です。

おそらく賛否両論ある作品です。みなさんはどう感じるでしょうか?ぜひ劇場でご鑑賞いただき、映画仲間と酒でも飲むながら映画談義に花を咲かせてみてください。

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