評価・・・84点
あらすじ
旅先で知り合ったオランダ人夫婦の家で週末を過ごすことになったデンマーク人一家。楽しいはずの週末がとんでもない事態に。
監督:クリスチャン・タフドルップ
キャスト
- モルテン・ブリアン(デンマーク夫)
- スィセル・スィーム・コク(デンマーク妻)
- フェジャ・ファン・フェット(オランダ夫)
- カリーナ・スムルダース(オランダ妻)
感想(※以下、ネタバレあり)
公開日に鑑賞。100人弱の小さめの箱ながらも満員と注目度の高さが伺えます。
結論から言うと、久しぶりに来た超ド級の胸糞映画でした。見なきゃよかった(いい意味で)。
妻を「世にも奇妙な物語みたいな話だよー」と騙して連れていこうとも考えましたが、やめてよかったです。(これも褒めてます)
さて、映画の内容ですが、登場人物はふた家族のみと限定されており、舞台もほぼ家の中という限られた空間で展開され、ふと感じた違和感が小さなささくれ程度からどんどん膨れ上がり、とんでもない状態にまで膨張し、最後に破裂するある週末の物語、です。
全くもって救いようのない形で物語は終わるのですが、これをヒトコワ映画と捉えるか、サイコパス映画と捉えるかは人それぞれですが、私はこの映画の主たるテーマは、メインの夫婦が表現する「悪の前での絶望的な無力感」だと感じました。
映画を観ながら情けない夫婦(特に夫)を観ながら、そうしちゃう気持ちすごいわかると共感。
「なんでヘラヘラ笑ってんだよ!」とか「なんで逃げないんだよ!」とか「なんで立ち向かわなんだよ!」といった感想は一切持ちませんでした。
この状況に置かれたら、私も愛想笑いをしちゃうんだろうな、パンツ脱げと言われたら、殴りかからずに脱いじゃうんだろうなと背筋がゾッとしました。
助かるわけがないのに、言うことを聞けば、もしかしたらなんとかなるかもと現実逃避して悪に迎合してしまうだろうな、パンツ脱いじゃうだろうなと主人公たちの一見不合理な行動に大いに納得させられました。
北九州監禁殺人事件とか尼崎殺人事件なんかを鑑みても、普通の善良な無垢な人々は、圧倒的な悪に非常に弱い、悲しいくらい無力であることがわかります。
災害時においても、発生時にアクション映画のように機敏に動ける人などほぼおらず、みなあっけに取られて、身動きできないとの研究を読んだこともあります。
この映画のクソ(いい意味です)なところは、善良であり良識もある一般的な人々の無力さやひ弱さを丹念に丁寧に執拗に描いているところであると思います。
悪を倒すヒーローは出てきません。リアルです。
悪から逃れる突飛なアイデアも出てきません。リアルです。
悪に立ち向かう勇気も出てきません。リアルです。
我々一般人は異常な人物や異常事態には、悲しいくらい無力なのです。
今作は、胸糞映画の傑作です。
ただ、一度でいいかな、二度目は観れないよ…
まとめ
北欧ホラーということで、ミッドサマー的なものを想定していましたが、ファニーゲームよりの作品でした。
もっと言えば、「一般人の無力」を描いているところから、冷たい熱帯魚に根底のテーマは近いかもしれません。
ぜひ、体調を整えて、心身ともに健康な状態で鑑賞してください。