評価・・・85点
あらすじ
荒野で孤独に過ごす老人。そこにナチスの小隊が通りかかった。ジジイ、死ね!ヒャッハー!しかし、老人は伝説のコマンドーであった。ナチスと老人の怒涛の殺し合いが始まる!
監督:ヤルマリ・ヘランダー
キャスト
- ヨルマ・トンミラ(ジジイ)
- ミモサ・ヴィッラモ(捕虜の女性)
- アクセル・ヘニー(ナチス将校)
感想(※以下、ネタバレあり)
公開翌週の月曜日に鑑賞。かなり小さい劇場で約半分の入り。ほとんどが仕事帰りの40代から50代の好事家っぽい人々でした。
感想としては、大満足!
憂鬱な月曜日を吹き飛ばすには、うってつけの映画でした。
お前は映画好きだから、映画を観るだけで気分が晴れるんだろ?一般人にとっては映画を観るだけでもストレスなんだよ、というお方もご安心ください。
ストーリーが超シンプルなんです。
静かにワンちゃんとお馬さんと生きるお爺さんに通りすがりのナチスが嫌がらせ。「おい、ジジイ、ヒャッハー」と調子に乗りまくるナチス。しかし、そのナメてたお爺さんが実は最強のコマンドー。殺って殺ってやりまくる!という誠にもって潔く、アッパレなストーリー。ストーリーを書いているだけで、興奮が蘇り、心拍数があがってまいります。
映画開始から一人目のナチスをヤるまでの流れが素晴らしい。セリフもナレーションも一切なく、雄大な大自然と老人の金鉱掘りとしての生活を映像だけで描き、老人の行水のシーンでは、その傷だらけの体を映すことで、この老人が只者でないことを説得力をもって流れるように描いていきます。
そして皆さん、お待ちかねの一人目をヤるシーンは、躊躇なくナチスのこめかみをナイフでグサ!控えめにいって気持ち良すぎ!ここから一気に物語が加速していきます。
しかし、その後も老人のセリフは一切なし。それがまた老人の最強コマンドーぶりにリアルさと映画全体に緊迫感を与えるとともに、観客を映画に集中させる仕組みになっています。我々観客は気を散らすことなく、ジジイの殺戮場面をじっくり堪能できるという素晴らしい仕掛けです。
ナチスに捉えられて凌辱されていた女性がニヤリと笑い、「お前たちは全員死んだよ、ロシア兵300人でも敵わなかった男だ。お前らが敵うわけがない。だから笑ったんだ」というシーンは鳥肌もの。さらに「彼は死なないんじゃない。死のうとしないだけだ」という名セリフから、老人がぬうっと現れるシーンで気絶しそうになりました。脳汁がいっぱいです。
その「死のうとしないだけだ」と名セリフを決めてくれた女性が、ジジイの登場にあわせて反撃に打ってでるのがまたカッコいい。彼女らがスクリーンに現れた当初は「これはヒーローに救われるか弱き女の役だな」とタカを括っていたのですが、きちんといい意味で裏切ってくれました。ジジイとアイコンタクトでうなづきあうのもバディ感がでて素敵です。
ラストシーンでようやくジジイはセリフを吐くのですが、べつにカッコいいセリフでもなく、淡々としていて、それがまた正義のためとかお国のためとかでなく、ナチスが絡んでくるからぶち殺しただけですけど、なにか?的な圧倒感がでていて、好きです。大好きです。
まとめ
ジョン・ウィックでもなく、イコライザーでもなく、はたまたミスター・ノーバディとも違う異なる存在感のジジイ。最高の「ナーメテーター映画」でした。
私にとっての傑作映画とは、観たあとに現実の見え方がちょっとだけ変わる、心のありようにちょっとだけ影響を与えてくれる映画です。(映画を観て人生観が変わった!とよく言う人がいますがあれは嘘です。もしそうだとしたら、その人の人生はあまりに薄っぺらです。)
そういう意味で、この映画は傑作です。
ぜひ劇場でご鑑賞ください。おすすめです。