評価・・・80点
あらすじ
東京・三軒茶屋に実在する幽霊ビル。取材チームが決死の潜入を試みた。彼らを待っていたのは想像を絶する恐怖と戦慄の連続であった。
監督:後藤剛
キャスト
- 角由紀子
- いしだ壱成
- やくみつる
感想(※以下、ネタバレあり)
いまから40年以上前のことだ。当時のちびっこを虜にしたTV番組があった。放送日には朝から楽しみで楽しみで、放送翌日は教室はその話題で持ちきりだった。
その番組名を「水曜スペシャル!川口浩探検隊」という。
人喰いザメ、ピラニアの大群、首狩り族、扱うテーマは幅広く、そしてそれらは男子の心を掴んで離さない。
新聞のテレビ欄に掲載される番組名も煽情的。
“首狩り族か!人食い人種か!?最後の魔境ボルネオ奥地に恐怖のムル族は実在した!!( 1981年4月29日放送)”
こんな魅力的なタイトルあります?小学生に見せたら新聞切り抜いて学校に持って行くよね。40代50代の方々はみな父親が読む前の新聞を切り抜いて、母に叱られた経験があるはずだ。
今回見た「三茶のポルターガイスト」はありし日の川口浩探検隊を思い出させてくれる掘り出し物であった。
冒頭から
「ここは東京。住みたい町ランキングで常に上位に位置するオシャレな町、三軒茶屋。ここに数々の怪奇現象を引き起こすビルがあるというのだ!我々はそこに潜入捜査を決行することを決意した!」
と、ズドーンとケレン味ド直球。
劇場には僕と同年代の川口浩探検隊世代に加え、若いカップル、若い女性2人組など様々だったが、その瞬間に、全員心は男子小学生になった(はず)。
ケレン味ド直球な冒頭につづいて、劇中で挟まれる再現ドラマも昭和のテレビ感があって、一周回って「これぞ正統派!」といった佇まいだ。
心霊が出現するパートでは、ガタガタとホワイトボードが揺れたり、突然ボールが落ちてきたり、鏡から水が滴ったりと、昨今のホラー映画に比べれば正直怖くないが、もし本物の霊ならばこんな感じなんだろうな。。。といったリアルさとケレン味がある。
そういえば、当時「川口隊長、ピラニアに喰われる!」という衝撃の一文をテレビ欄で見つけたときは、学校中が大騒ぎとなったが、実際の放送では、釣り上げたピラニアにちょびっと指から噛まれて血が出た程度で、隊長がアマゾン川に落ちてみるみる骸骨になること映像を想像していった全国のちびっ子たちを大いに落胆させたものだが、とかく「ホンモノ」は地味になりがちである。
そのことからも、三茶の地味な演出もホンモノらしさがあって非常にワクワクさせてくれるものだった。
また、コックリさんのパートでは、コックリさんが明確な答えを指し示さず、意味不明な言葉の羅列を指し示し、出演者みんなで「え?え??どういう意味???」というくだりがあるが、これもコックリさんをやったことがある人には「あるある」だろう。コックリさんが衝撃の真実を告げるような展開にならず、同級生が教室の片隅でコックリさんをやっているようで非常にほっこりとした。
そうだ、ここに触れないわけにはいかない。
有名人が恐怖体験を語るパートで、怪談を語るのはなんと「いしだ壱成」と「やくみつるだ」!
島田秀平等の怪談芸人がでるようなら、舌打ちものだが、この人選には「そう来たか!」とニヤリとしてしまった。
結局最終的な謎の解明や解決には至らない曖昧なラストで締めくくられたが、それもまたいい。
オカルトは元来そのようなものなのだ。オカルトとはこちらが見ようとすると見えなくなってしまうものなのだから。。。
まとめ
この映画はホンモノだ、ニセモノだとガタガタいうような代物ではない。それは無粋というものだ。
川口浩探検隊の活躍を見て、ワクワクできる少年のような純粋な心をもった人。川口浩探検隊のケレン味を見て、ニヤリとできる粋な人。そのような人が劇場で一体感を持って鑑賞するべきものだ。
願わくば、川口浩探検隊のように角由紀子隊長シリーズとして続いていってほしい。そのたびに僕らをワクワクさせてほしい。