戦慄怪奇ワールド コワすぎ!【2023年】市川はコワすぎのキャプテン・アメリカで、私は工藤に憧れる田代なのだ。

映画

評価・・・83点

あらすじ

廃墟に現れた謎の「赤い女」をカメラに収めるべく、工藤・市川・田代は投稿者と霊能者を従えて、廃墟に殴り込む。果たして彼らの運命はいかに?

監督:白石晃士

Jホラー界の最後の希望

キャスト

  • 久保山智夏(市川D)
  • 大迫茂生(工藤P)
  • 白石晃士(田代カメラマン)
  • 桑名里瑛(霊能者の珠緒)
  • 木村圭作(珠緒の弟子の鬼村)
  • 南條琴美(赤い女)
  • 福永朱梨(はるか)
  • 小倉綾乃(あやね)
  • 梁瀬泰希(だいき)

感想(※以下、ネタバレあり)

よくできたシリーズ作品には、各話に散りばめられた伏線とその回収、魅力的な登場人物、彼らの変化や成長の物語、そしてシリーズを通して語られるべき一貫したテーマがある。

コワすぎ!シリーズはこれらの条件をすべて満たした上で、さらに我々の想像の斜め上を行き、そして強力な吸引力のある稀有な作品群であった。

シリーズを見始めた当初は、私は工藤の無軌道な暴力と名言の数々(「売れるぞ~」、「バカヤロウ、実験だよ、実験!」etc)に一喜一憂していた。

工藤が破天荒なのには異論がないだろう。口裂け女を車で轢き殺そうとする奴いる?五芒星の中で軽快にフットワークを踏んで河童を迎え撃つ奴いる?

人は平凡なものでなく、規格外の、桁違いのものに強く惹かれる。

だが、回を重ねるごとに、工藤の破天荒さをいっそう際立たせているのは、市川であることに気づく。

ときに頭を叩かれ、ときにローキックを食らいながらも、「工藤さん、いい加減にしてください!」とはっきりと意思を伝える芯の強さで、物語を軌道修正しながら、転がしていく。

工藤ほどの厄災ではないが、現実世界にも様々なクソッタレが存在する。いや、クソッタレだらけだ。

すぐにキレる上司、朝令暮改の業務通達、意味のわからない社訓、密告をする同僚。。。その全てに「いい加減にしてください!」と言いたい。しかし何も言えない自分がいる。

だから、無茶苦茶な上司(工藤)、嘘をつく投稿者、人間の手には負えない怪異といったものに果敢に立ち向かっていく市川に目を奪われるのだ。

また、市川の表情がいい。常に眉間にシワかへの字口。癒し系の要素がゼロ。媚びる気ゼロ。それらがワザとらしくなく、またとない魅力となっているのは、演者の久保山智夏氏の演技力のなせる技であろう。

彼女の成長も見どころのひとつだ。シリーズ当初は工藤にこき使われるアシスタント的な役割であったが、工藤に対するアンチテーゼ的な役割を経て、徐々にストーリーになくてはならない地位を占めるに至る。そこまでシリーズを見進めた者は、もはや市川なしではいられない自分に気づくことだろう。

そして彼女の正義もまた工藤の横暴に呼応してエスカレートしていく。投稿者を怒鳴りつけたり、張り倒したりと。そのエスカレーションは危なっかしい正義感をもったキャプテン・アメリカのようだ。彼女がキャプテン・アメリカならば、さしずめ工藤は突飛な行動をとるアイアンマンか。ただのいけ好かない常識人でないところも市川の魅力であり、MCUがキャプテンとトニースタークの両輪で物語を転がしてきたところと通ずるものがある。

では、我々にもっとも近い登場人物は誰なのだろうか?

工藤のような見境のない突破力に憧れながら、市川のような折れない心と芯の強さに感心するしかない私たちは、さしずめ彼らに振り回される田代カメラマンであろう。

彼の目は私たちの目だ。

工藤にも市川にもなれない我々は、田代の目を通して彼らの行動を見守るしかないのだ。

まとめ

コワすぎ!シリーズ(口裂け女から最終章まで)は、工藤と両親、そして鬼神兵の物語であった。

超コワすぎ!シリーズは、我らが市川の物語になるはずだったのではなかろうか?

幼少時代に誘拐されて1年後に帰ってきた兄、それが原因なのか霊能力を有することになった兄。工藤がその因果からコワすぎ!に関わることになったように、彼女もまたなんらかの因果から知らず知らずに超コワすぎ!に関わることになり、それがシリーズを通して、明らかになっていくのだろうと勝手に期待していた。

それらが語られることなく、シリーズが完結を迎えてしまったのがまことに残念である。もっとも、それは市川推しの私の無いものねだりなのかもしれない。

いずれにせよ、今後、様々なホラー映画を観るたびに、思い出すことだろう。

「こんなとき、工藤ならどうするのかな?やっぱり物理攻撃かな?市川は工藤に反発しながら、やっぱりパンチを叩き込むのかな?田代は相変わらず困った顔でオロオロするのかな?」と。

そして「みんな元気かな?…」と。

このようなシリーズをリアルタイムで体感できた我々にも、何らかの因果があるのかもしれない。

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