機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島【2022年】褐色のサザンクロス隊をずっと見ていたい!ずっとずっと見ていたい。他のシーンはいらないかな・・・

映画

評価・・・80点

あらすじ

宇宙世紀0079年、オデッサを目指すアムロたちを乗せたホワイトベース。彼らに新たな司令が下った。無人島での調査を進めるアムロたちであったが、そこはククルス・ドアンと呼ばれる男が支配する島であった。

監督:安彦 良和

キャスト

古谷徹、古川登志夫ほか

感想(※以下、ネタバレあり)

平日の昼間の回、さらに公開2週目という微妙なタイミングであったことからか、客の入りは半分といったところ。客層は予想通り全員男性、白髪混じりの全員40代以上(当然、僕も含む)。つまりファーストガンダムの洗礼を受けた世代だ。

内容としては、本作はあくまでファーストガンダムのエピソードのひとつである「ククルスドアンの島」からインスパイアされてできた作品であり、全く別物と考えて良いだろう。
全体的な印象としてはまずまず、と言ったところ。期待以上ではない。ただし、大はずれでもない。正直ボールを置きに来た感あり。

オリジナルとは別作品ではあるものの、小さく話をまとめてしまった感がある。もっと大胆に変えてしまってもよかったのではないか?子供たちを守るため、島に立て篭もる凄腕の脱走兵、という大筋だけを拝借し、それ以外はもっとオリジナルストーリーを練り込むべきだったのではないか?と感じた。

というのも、ストーリーの取ってつけた感が半端ない。戦争孤児たちの悲惨な境遇を見て、戦いが嫌になってしまった男の割には、島への侵入者を皆殺しにするのは、どうも納得がいかない。彼ら侵入者たちも上司の命令に従っただけの力なき兵士に過ぎず、また彼らにも家族がいるだろうに。いきなりザクで襲い掛からなくてもいいだろう。「名もなき子沢山の農民でごぜーます」とあくまで不戦を貫き、どうしようもない時だけ、やむなく戦う、となるべきではないだろうか?

ストーリーは微妙であるが、モビルスーツの戦闘シーンがものすごくカッコいい。震えるほどだ。

しかし、ドアンのチグハグな行動から、そのものすごくカッコいいモビルスーツの戦闘シーンにカタルシスを感ずることもなく、共感することもなく、わー!カッコいーなー!と思うだけになってしまった。
海底に沈むドアンが葬った多くのモビルスーツが映るシーンがあるが、争いを好まないどころか殺人鬼じゃねーか、サイコパスじゃねーかと身震いする思い。

極め付けはアムロだ。逃げ惑うジオン兵をガンダムで踏む潰す!容赦なく踏み潰す!え、アムロってこんなキャラだっけ?頼りない少年が戦争を通して成長する話、いわば未来版十五少年漂流記ではなかったっけ?これじゃ戦争で精神がいかれちまったフルメタルジャケットだよ。

また、随所に見られる昭和的演出の意味がわからない。例えば、お腹が減ったらグー、昔のギャグ漫画の定番「川」のような涙。すぐに泣くフラウボウ。褐色のサザンクロスが現代的なアプローチで滑走するシーンの後に、こんなものを見せられると不思議な気持ちになる。昭和世代の僕らに配慮して……ってことなら、そんなのいらないから。

しかし、何度もいうように戦闘シーンがたまらなくカッコいい。サザンクロス隊の美しい滑走、そして流れるようなフォーメーション。ドアンザクの一瞬で目前に詰め寄る迫力、そして一瞬でその場から離脱する美しさ。なんなら戦闘シーンだけ90分みたいくらいだ。

ひとつひとつの動きがカッコいいからこそ、戦闘シーンにおいてすら、脚本のアラが目立ってしまう。

あんなカッコいいサザンクロス隊がなぜドアン1人にやられてしまうのか?

例えば、島特有の地形を知り尽くし、かつ、サザンクロス隊のフォーメーションを知り尽くしたドアンに攻撃を封じられる、あるいは、敵が攻めてくることを予期してさまざまなブービートラップが仕掛けてある等々の納得のいく展開があってもよかったのではないか?

さらにガンダムが戦闘に参加するにあたり、その必然性やアムロの心の動きなどもあいまいなため、テーマ曲をバックにガンダムが出現しても、いまいち興奮出来なかった。

最後にアムロが「あなたの戦いの匂いが敵を惹きつける」といってドアンザクを海に投げ捨てるシーンも唐突な感じ。「子供たちを守るという目的がありながら、やはり戦いを楽しんでしまう生まれついての戦士たるドアン」という前振りがあれば、納得もいくのだが、そんなこともなく、唐突に海にポイ。はなから、農民でごぜいます、といっておけば、みんなハッピーだったやん。それとも、戦争反対!憲法9条大好き!自衛隊があるから戦争に巻き込まれるのだ!という昭和からのメッセージなの?

とまあ、このような話を同年代の同僚と語りながら、このように「語れる」作品は素晴らしいなあ、と思いながら、それにつけてもサザンクロス隊はカッコよかったなと、もう一度観に行こうかなと思いながら、もっとああしてくれれば、こうしてくれれば、最高だったのにな、いやしかし褐色のサザンクロスはイカすよなと会話は堂々巡り。

我々の結論としては、やはり、ドアンがどのようにサザンクロス隊を結成したのか、そしてサザンクロス隊を率いてジムを50機ぐらい葬り去り、悲しい出来事から脱走するまでを描いた「ククルスドアンの島シーズンゼロ」が無性に見たい!ということになった。そのためなら、我々は署名運動も辞さないと覚悟である。

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