評価・・・73点
あらすじ
指名手配犯をつかまえて懸賞金をゲットや!と言い残して父が消えた。娘は父を探し始める。
監督:片山慎三
「岬の兄妹」ほか。ポン・ジュノ組にて助監督の経験あり。
キャスト
佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也ほか
感想(※以下、ネタバレあり)
僕は佐藤二朗の演技が苦手だ。
さあ、あくの強いおもしろキャラだぞ、さあ、お待たせしました二朗だぞ、どうだ面白いだろ?さあ、笑え。という何とも言えない押し付けがましさが嫌なのだ。
この作品も彼が主演ということで躊躇したのだが、吉田監督の「空白」で素晴らしい演技をした伊東蒼が出ると聞き、ならば…と鑑賞した。
伊東蒼が素晴らしいのは予想通りとして、今回の二郎はいつもの押し付けがましさがなく、抑えの効いた素晴らしい演技。
冒頭の二郎がカナヅチを振り回すスローモーションシーンが印象的。ポンジュノの「母なる証明」の野原でババアが踊り狂うシーンを想起させ、影響受けてるのかなとニヤリ。
小汚い格好で、20円が足りないと万引きし、娘に迎えにきてもらい、万引きした食い物をくちゃくちゃ食べ、台所の料理をつまみ食いし、指をペチャペチャ舐め…と若い女性に嫌われる要素満載の「ダメ親父」っぷりを遺憾なく発揮する序盤から、妻を介護する献身的な夫でありながら、時折はみ出る「魔」をうまく表現した中盤、そして狡猾さと強かさを発揮した終盤まで佐藤二朗の演技は素晴らしかった。
しかし、やはりというか、残念というか、あとひと味足りないと思うのは僕だけだろうか?
ヒロインが連続殺人犯と対峙するシーンの緊迫感のなさ、佐藤二朗の金に対する執着感を表現しきれていない感、最後の卓球の場面での哀愁感の薄さなど、全体的に薄味な印象が拭えない。
これは佐藤二朗のキャラクターを無駄に消費し、彼の本来持っている才能をスポイルし続けた業界の責任ではないかといささか暗い気持ちとなった。
しかし印象深い作品ではあることは間違いない。また、伊東蒼の次回作を早く見てみたいと思わせてくれただけでなく、佐藤二朗に懐疑的だった僕に、本気の二朗をまた見たいと思わせてくれたのは、監督の手腕だと思う。
良作だ。