パール【2023年】圧倒的な演技力で紡ぐ哀しき怪物の誕生譚

映画

評価・・・88点

あらすじ

前作「Xエックス」で大暴れした「色ボケ全裸クソババア」の若かりし日の物語。

監督:タイ・ウェスト

キャスト

  • ミア・ゴス(パール)
  • タンディ・ライト(母)
  • マシュー・サンダーランド(父)
  • エマ・ジェンキンス=プーロ(義理の妹)
  • デヴィッド・コレンスウェット(映写技師)

感想(※以下、ネタバレあり)

公開初日にTOHOシネマズにて。

開場案内の放送が流れワクワクしながら入場ゲートに向かうと長蛇の列。しかも殆どが女性、大量の女性たち。

最近めっきり暑くなったからみんなホラーの気分なんだなあ、A24の作品はクオリティ高いから人気あるだなあと感慨深く列に並んだのだが、なんのことはない、女性たちのお目当ては七夕の日限定公開の全く別のイケメン俳優映画であった。

残念ながらパールは半分以下の入りだ。

私としては、満席のなか、女性たちの悲鳴を聞きながらホラーを堪能するのもオツであるなとそんな気分になっていたので、若干気勢を制せられた思い。

しかし映画の方はそんな小さなつまずきなど一瞬で消し飛ばず、素晴らしい出来であった。

前作のXの冒頭は撮影用カメラからのアングルと画角で静かに殺人現場を映し出すことで「これから何がはじまるのだろ」と観客の意識を一瞬で引き寄せたが、今回は冒頭にパールのかわいいダンスを盛り込んできた。

観客は基本「あのババアの若い頃の映画」とわかって見ているはずなので、「え、ちょっと待って、この可愛く踊る娘が、あの全裸クソババアになるの??」と一気にもっていかれる。

これが……

終盤にパールがダンスオーディションで見せた笑顔はこの冒頭の可憐な笑顔ではなく、一線を越えて踏み出してはいけない世界に踏み出したものだけが見せる狂気の笑顔であった。

この冒頭の印象的なシーンが観客の頭に残っていることで、オーディションの狂気のダンスの怖さを際立たせることに成功している。

あどけない笑顔、狂気の笑顔、あどけない涙、号泣、さめざめと流す狂気の涙、豹変する表情。

とにかく、パールを演じたミアゴスが最高で、そして狂った演技をてんこ盛りに見せつけてくれる。

これでもかというほど、その才能を見せつけてくれるのだ。

特に終盤のダンスオーディションから自分語り、そして印象的なラストシーンまでが圧巻。

パールの最後の笑顔は、狂気に囚われ、もう2度と抜け出すことができないことを悟った泣き笑いだ。

自分をがんじがらめしてきた両親を殺すことで自由になったはずのパールが狂気の世界に囚われ、あの家に囚われ、あの家で一生を終えたというところまでを観客がしっかり腹落ちしたタイミングで、あの泣き笑いを見せられるので、ラストシーンがとても印象深く、そして恐ろしく、深く心に刻まれるのだ。

自由になるには怪物になるしかなかった。怪物になってみたら、もうこの家から逃れることができないことを悟った。悲しき怪物の誕生だ。

まとめ

今作は3部作の真ん中にあたる。しかし単体の映画としてもきちんと成立しているので、前作を飛ばして見ても支障はないだろう。

しかし、上述したとおり、ラストシーンを堪能するためには前作は必見。(前作からの細かな伏線回収もあるしね)

アマプラで前作を見て、すぐに映画館に走って欲しい。傑作です。

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