ジョン・ウィック:パラベラム【2019年】傷ついた男たちを癒やすための美術館

映画

評価・・・83点

あらすじ

前作で殺し屋としての掟を破ってしまったジョンウィック。殺し屋組合からの追放され、さらに懸賞金対象処分となってしまった!世界中の殺し屋が襲いかかる。この最大のピンチから脱することはできるのか?

監督:チャド・スタエルスキ

マトリックスでキアヌ・リーブスのスタントを務めた。ダン・イノサントに師事し、ジークンドーを学ぶ。また修斗での試合経験あり!アクションが得意な監督でなく、本物の格闘家。

キャスト

キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、ハル・ベリー、イアン・マクシェーン

感想(※以下、ネタバレあり)

Mr.ノーバディが全世界のおじさん達に天が与えたもうた「観るユンケル黄帝液」であることは、前回述べた。今回、ご紹介するのは同じくナーメテーター映画のスマッシュヒットであるジョン・ウィックの第3作、パラベラムだ。1作目が大興奮のナーメテーター映画であるとすると、2作目はその覚醒した男が、舞い戻ったその危険な世界でどう生き抜いていくのかという話であった。そして3作目である今作パラベラムはどのような内容か?

正直にいうとストーリーはやや薄っぺらい。2作目の蛇足、あるいは4作目への橋渡しといった印象だ。

しかし、そんなことは関係ない。そんなことより重要なことがある。

そう、アクションがカッコいいのだ。

カッコいいから全て許せる、全てオーケー、全てはオーライYaベイベイだ。そうだろ?

時に単調になりがちな銃撃戦、時にマンネリ感の出る徒手格闘戦、これらをミックスして、いいとこ取りをしたのが、ジョンウィックのアクションである。投げながら撃つ!撃ちながら投げる!殴りながら撃つ!撃ちながら殴る!かわしながら撃つ!撃ちながらかわす!超近距離での銃撃戦をリアルさを損なうことなく美しくもワクワクする新しいアクションに仕上げたジョンウィックシリーズをリアルタイムで体感できることに、僕らは神に感謝せねばならない。

特に今作は、投げナイフを使ったアクションシーン、馬を使ったアクションシーン、犬を使ったアクションシーン、それらに加えて上述した超近距離ガンファイトがミックスされるんだぜ?美味しいものしか出てこない、大好物しか出てこない満漢全席だ。

超近距離ガンファイトの素晴らしいところは、殺し屋としてはロートルの部類に入るジョンウィックが若い殺し屋たちを蹴散らすことに違和感を感じさせないこと。合気道のように滑らかに相手の直線的な攻撃をいなしながら、相手の力を利用して壁に叩きつけ、迫り来る次の敵に向かい、今度は飛びつき腕十字で相手を寝業に誘い込みながら、超近距離でハンドガンをぶっ放す。

まるで美しい絵画を見ているようだ。

そうこの映画は「美しい絵画を所狭しと飾ってある美術館」である。

話は変わるが、僕の同僚(同年代の中高年)が最近元気がない。突然の配転による慣れない仕事に加え、慣れないがゆえの不手際から発生したミス。それに気づいていながらも、見て見ないふりをしていたがばかりに、その小さなミスが新たなミスを呼び、そのミスを何とかするための処置からまた別のミスが発生し、小さなミスが気づいたら雪だるま式に巨大になってしまったのだ。

彼は疲れている。疲れ切っている。

日報に「私は、もう、疲れきって走れません」と昭和のマラソンランナーのようなセリフまで書くほどだ。

そんな彼に、有休を取って、ジョンウィック:パラベラムを観ることを薦めた。Mr.ノーバディを薦めるべきか一瞬迷ったが、今の彼にはジョンウィックが適していると判断した。

だって、疲れきって何も喉を通らない時もあるだろ?どんな好物ものどを通らないことだってあるだろ?疲れきって何も考えたくない時だってあるだろ?疲れている男の全てがユンケル黄帝液を飲み干せるとは限らないのだ。レッドブルだって吐き出してしまうくらい疲れている男もいるのだ。特に僕らのような疲れることには慣れきってはいるのだが、いい加減金属疲労を起こしそうな世代にとっては。

有休から戻った彼はつきものが落ちたかのようにサッパリとしていた。

ヘトヘトだった彼には、やはり一本の映画にチャレンジできるほどの気力も体力も残ってなかったのだが、名画を見るように、ジョンウィック:パラベラムの素晴らしいアクションシーンを眺めるにつれ、ささくれ立った心が解きほぐされていったとのことだ。

そう、この映画は疲れ切った男が「眺める」のに適している。太古の昔、戦いに疲れた戦士が暗闇の中でひとり焚き火を眺めるように。

次回作にも大いに期待している。

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