ザ・メニュー【2022年】難しいけど印象深い、でも1回食べれば満足かな・・・とそれこそシェフに怒られそう的映画。

映画

評価・・・78点

あらすじ

天才シェフが腕を振るう、予約困難な孤島のレストラン。そこに行くことのできた幸運な招待客11名。彼らが味わうのはどんな料理なのか・・・

監督:マーク・マイロッド

キャスト

シェフ:レイフ・ファインズ

マーゴ:アニャ・テイラー=ジョイ

タイラー:ニコラス・ホルト

感想(※以下、ネタバレあり)

スラムダンクと迷ったが、すでに公開3週が経ち、上映回数も少ないなか、映画館に着いたタイミングが上映時間にぴったりであったため、こちらを選択した。

思った以上に女性客が多く、意外な感じ。

総評としては僕には難解すぎて監督の伝えたいことの半分も理解できなかった。僕の感性の鈍さと頭の悪さが原因であるので監督を責めることはできない。

といっても、半分しかわからなかったから、半分は寝てましたよ、という意味でなく、また、半分しかわからなかったから50点の映画だ、という意味でもない。
印象深いシーンや感じ入ったシーンなどが随所にあったので、その点を中心に言及していきたいと思います。

難しい考察は僕にはできません。頭のいい人が書いたレビューがあると思うので、そちらにお任せしたいと思います。

お気に入りのシーン1:バチーン

これは観た人全員がお気に入りだと思う。

次の料理を紹介する際にシェフがバチーン!と手を打つ。その瞬間、招待客全員がビクッ!映画館全体がビクッ!それが快感だった。

シェフのバチーンは全員を注目させ、萎縮させ、その場を支配する。まるで祭司のようだ。

そう、彼のバチーンは拍手(はくしゅ)ではなく、宗教的な意味合いを持つ拍手(かしわで)と言って良いだろう。

事実、彼がバチーンと手を打つと厨房スタッフのみならず、招待客を含めた全員が蛇に睨まれたカエルのようになるのが印象的であった。

そして、終盤にマーゴがまさかのバチーン返し。

とくにまだ何もおきてないのだが、彼女のバチーン一発で一気に形勢逆転がなされたように感じるのは非常に不思議だ。

それまでのシェフの再三にわたるバチーンによる刷り込みとアニャテイラージョイの目ヂカラと演技力が結実した結果だと思う。

お気に入りのシーン2:イエス!シェフ!

厨房スタッフが大声で声をあわせて「イエス!シェフ!」。

初見では「なんじゃこりゃ?軍隊か?」と不思議に感じたが、映画が進むにつれて、これがだんだん快感になっていくのが不思議。

僕が小学生だったら、母親にむかって「イエス!シェフ!」、学校の先生にむかって「イエス!シェフ!」を連発していたことだろう。

厨房スタッフたちも「イエス!シェフ!」といっているときは快感だったに違いない。

映画前半で厨房スタッフたちは共同生活をしており、タコ部屋よりひどい野戦病院状態だ。厨房スタッフ達はこのなかで洗脳され、イエス!シェフで快感を得る軍団にさせられたんだろうと想像される。

かくいう僕も以前ブラック企業のブラック社畜だったことがあるので、彼らの気持ちもよくわかる。ブラック企業では絶対的な社長とそれに従うブラック社畜で構成されている。シグルイにも書いてあったと思うが「封建社会はひとりのサディストと多数のマゾヒストで構成される」のだ。

映画前半の集団生活の伏線と何度も繰り出される「イエス!シェフ!」。これらが最後には集団自決という結末に結びつくのは納得できる展開だ。(やや強引ではあるが・・・)

イエス!シェフ!に少しでも快感を覚えた方はご注意を。あなたも僕と同じくブラック企業のブラックスタッフに闇落ちする危険性を抱えている。

お気に入りのシーン2:奨学金

映画が進行していくと、徐々にシェフの動機が明らかになっていく。自分たちを「与える者」と定義し、「奪う者」をあぶり出していく。

  • 舌鋒鋭い批判で数多の料理人を血祭りにあげてきた批評家と編集者→死んでヨシ!
  • 金に物を言わせて、何度も高級料理を食べるが何も覚えていない金持ち夫婦→死んでヨシ!
  • 料理を食べたいわけでなく、ただ箔をつけるためにやってきた青年実業家たち→死んでヨシ!
  • 料理を楽しむのでなく、趣味として消費するただのウンチクくそ野郎→死んでヨシ!
  • クソみたいな映画でシェフの貴重な昼下がりを台無しにした大根役者→死んでヨシ。。。なのかな??

そして、最後にその大根役者の恋人でアシスタントの彼女の死んでヨシな理由をシェフとのやり取りでご紹介しよう。

  • シェフ「君は〇〇大学の出身だろ?」
  • 女「そうです」シェフ「大学には奨学金でいったのかな?」
  • 女「いいえ・・・」
  • シェフ「じゃ、死んでヨシだ」
  • 女「へ・・・?」

なんとなく、「奪う者」サイドの人間たちにはそれなりの死んでヨシの理由があり、納得もできたが、大根役者とそのアシスタントについては、このシェフ確実にイカレテルナ!と笑ってしまった。

それまでその作る料理とあいまってシェフの理路整然とした部分が強調されてきたが、ここはイカレ具合むき出しで非常によかった。

なぜマーゴは助かったのか?

シェフの蛮行は「与える者」から「奪う者」への復讐がその動機であった。「与える者」と「奪う者」で共同作品を作ることで最後の晩餐を締めくくろうと考えたのだろう。

ゆえに何者でもない、予期せぬ客であるマーゴに「与える者」か「奪う者」かどちらかを選ぶように執拗に迫ったのだ。

最後にマーゴは「私はまだハングリーだ」と宣言し、ほんとうに食べたいもの(ハンバーガー)を注文し、それをほんとうに美味しそうに食べ、そして食べきれなかった部分を持ち帰る選択をした。彼女は「与える者」ではなかったが、「与える者」と対立する関係の「奪う者」でもなかった。「与える者」と対等の関係であるほんとうのお客であった。

そのため、お腹いっぱいになり、食べきれなかった部分を持ち帰る「お客」であるマーゴは帰ることを許されたのだ・・・と僕は解釈した。

それまでの料理が高級なんだろうけど、まったく美味しくなさそうなのに、マーゴのために作るハンバーガーがなんとも美味しそうにそして楽しそうに作るこの場面は、この場面のためだけに、それまでの長い前フリがあったのかと思わされるぐらいの秀逸なシーンであった。

下手な考察はここまでにしておこう。シェフに「死んでヨシ」される前に。。。

まとめ

冒頭に書いたとおり、僕には半分ぐらいしか理解できない映画できなかった。しかし、不思議な魅力に満ちた映画であった。

ウィレム・デフォーの「ライトハウス」のように、さっぱりわかんないけど、なんか記憶に残る作品という部類に入る。

よって、「ライトハウス」のように何度か見れば、あらたな発見があり、あらたな感情が沸き起こり、あらたな感想が得られるような映画なのかもしれない。

ただ僕は一発目で「おもしれ~!もう一回みたい!」という映画が好きで、そのような映画を何度も繰り返し観たいので、ライトハウスもザ・メニューも2回、3回と見る機会は回ってこないかなとも思う。

だが、何年経っても、「バチーン」と「イエス!シェフ!」を忘れることはないだろう。

この映画超好き!と90点以上を付ける人、クソ映画だ!と30点を付ける人、僕のように全体としては意味不明だが、好きなシーンがいくつもあるよ!と70点を付ける人と、この映画は好き嫌いがくっきりと分かれると思う。

さて、あなたは何点つけるだろうか?

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