会社のエキストラに甘んじるか、それとも評論家を目指すべきか?

仕事

無理して出世したい訳ではない。

しかし、ある程度の、なんとか暮らしていける程度の、なんとか家族を養っていける程度の給与をもらうためには、やはりヒラではなく、もう少し上のランクに行きたいものだ。

かといって、毎日深夜まで続く不毛な残業に耐え、分からず屋の上司の理不尽な叱責に耐え、実態を反映した計画を作れば、甘い計画を作るなとダメだしされ、それではと背伸びした計画を無理やり作れば、案の定ノルマを到達せず、今度は計画達成能力がない、クズだカスだと罵られ、それでようやく手にした待望の昇進。給与明細を見てあらビックリ、月8千円の役職手当だ。

さらに昇進後は8千円と引き換えに、上司なんだから、リーダーなんだから、責任を取る立場なんだから、と罵られる…

これならば昇進なんかしなくていいや、ヒラでいいや…これは多くの人が思うことであろう。

ここで朗報だ。残業なし、ノルマ達成なし、罵倒を受け流すスルー力なし、で手っ取り早くステップアップし、その後も過度な負担なく大過なく過ごせる方法がある。

僕らが所属しているような中小企業は得てして印象や思い込みで人事が決まる。人事考課なんかあってないようなもの。年に数回ある査定の面談もなんてことはないお爺ちゃん(上司)のお話相手になっているようなものだ。

「最近は春めいてきたねー、歳を取ると時間が経つのが早くてね、正月が開けたかと思ったらもう3月だ、ところで最近仕事はどう、頑張ってる?」

短くいえばこのような趣旨の話をうすーくながーく30分くらいにして聴かされる。苦痛だ。まさに老害。それがほとんどの中小企業で査定面談として実施されている。

中小企業では査定面談など儀式として存在しているのみで、人事的な評価とは別の場所で決まっている。

おじいちゃん上司が僕らを面談する前に決まってる。

どのように決まるのか?

空気だ。雰囲気だ。社内で「あいつはできるやつだ」という空気で決まる。(おじいちゃん達はそのあたりの空気を読むのが天才的にうまい)

そのようなクソ会社で、お勧めしたいのは「コメンテーター」に徹することだ。

新製品導入会議や新事業参入会議など比較的前向きな会議に参加しても、決して調子に乗ってポジティブな発言などしてはならない。

下手したら担当者にさせられて、失敗時のスケープゴートにされるのがオチだ。

その場のノリで気分良く発言などするな。

じっと黙っていろ。

みんながワイワイ盛り上がり、そろそろお開きか?という時に必ず振られるはずだ。

「あまり、発言していませんが、何か最後にありませんか?」と。

そこでおもむろに言ってやろう。

「非常に素晴らしい計画ですが、一点考慮しなければ、ならない点があります」と。

浮かれた奴らは押し黙って君の発言を待つだろう。

あとは簡単だ。

会議中にむっつり黙って考えておいた取って置きの心配ごとをもったいぶった様子ではっきりとした口調で伝えてやればいい。

モゴモゴ言うな。ゆっくりとはっきりと。自信がなくてもゆっくりはっきり言えばそれなりに格好がつく。

内容はなんでもいいのだ。できれば数字に現れないものがベターだ。

「メンバーの役割分担をきちんと決決まっていないのと、その中心となるべき”まとめ役”が不在なのが気になります」

「失敗した場合の撤退プランを今のうちから織り込んでおくべきだと思います」

「情報共有の体制、きちんとした報連相の体制も忘れずに構築しておくべきだと思います」

本当になんでもいいのだ。半分ぐらいの人は「なんだ、あいつは。やりもしないで」と冷ややかな態度を見せるだろう。しかし、ある人は

「会議の雰囲気に流されずに、冷静に考えているな」と思ってくれるかもしれない。また、ある人は「コイツはこのプロジェクトに批判的だからメンバーには入れないようにしよう」と考えるかもしれない。

サラリーマンは成功を望んではいけない、失敗しないことが成功だ。

「コメンテーター」に徹することで、クールな印象を与えるだけでかく、のるかソルかの鉄火場から脱出さえ出来ている。

最高だ。

まさに攻防一体の技である。

プロジェクトが失敗すれば、「やはり心配していた通りになりましたか….」と眉間に皺を寄せればいい。仮にプロジェクトが成功すれば「私のアドバイスが役に立って良かったです」と笑顔で祝福してやればいい。

それで社内の空気は概ね醸成される。いっちょあがりだ。

そこまで分かっているんだから、お前はさぞ快適なコメンテーターライフを送っているだろうって?

否である。

楽して出世してガッポガッポに違いないだろって?

ストレスフルの薄給である。

しかも、プロジェクトの主役ではなく、良くてエキストラ、最悪スケープゴートだ。

なぜ、この位置にいるのか?

これまで奴らに悔しい思いをさせられてきた僕の意地だ。

「コメンテーターには絶対にならない。くされ評論家、糞食らえ」という暗い炎が僕の原動力なのだ。

いつか奴らに煮え湯を飲ませてやりたい、エキストラの下克上を見せてやりたい、追い詰められた山羊の一突きをお見舞いしたい、そんな暗い炎を燃やして、プロジェクトの末席を汚している。暗い炎を灯しながら、なんとかこちら側で留まっている。

きっと日本のどこかで、要領悪く、悔しい思いをしているエキストラでスケープゴートでドブさらい役に甘んじていながら、それでも何とか戦っているまだ見ぬ誰かを思いながら、僕も何とか踏み止まっているのだ。

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