評価・・・23点
キャッチコピー
- 迷信をあざけり、信仰を疑うものは、この恐怖に立ち向かうがいい
監督:ポンタリット・チョーティグリッサダーソーポン
キャスト
- プーウィン・タンサックユーン(爽やかイケメン)
- プーンパット・イアン=サマン(ナチュラルイケメン)
- クナティップ・ピンプラダブ(ワイルドイケメン)
- タソーン・クリンニウム(ミーナー)
感想(※以下、ネタバレあり)
この数年で観たホラー映画のなかで最も好きなのは「女神の継承」です。
この作品は、昨今のJホラーが失ってしまった「じっとりと湿った不穏な空気感と静かな絶望感」が満載で、これからはタイホラーの時代なのかな、JじゃなくてTだなとワクワクしたものです。
しかし、その後、期待してタイホラーをいくつか観ましたが、どれもこれも期待外れ。「女神の継承」は脚本力に定評のある韓国チームと土着信仰的な雰囲気が色濃いタイのもつ魅力が強烈なケミストリーを起こした稀有な作品であり、決してタイホラーの時代が来ているわけではないんだなと自己完結していました。
そんなときに、映画館でふと目にしたチラシ。
待ってたやつが来たかもしれん!「女神の継承」の恐怖をもう一度味わえるかもしれん!と胸が高鳴りました。
公開日には残業を避けるべく、なんとか降ってくる雑務をかわして、スキップしながら映画館に飛び込みました。
結果は、モンスターエナジーって効果あるんだなーと感心させてくれる映画でした。
以上で解散、終了!なんですが、クソが!と悪態つくだけでは小学生。何故クソなのかをきちんと言語化することが大人の作法でありましょう。
- 音がクソ
まず、音がデカくてダサい。
怖そうな場面で怖そうな音楽を爆音、感動しそうな場面で感動を誘うような音楽を爆音。クソダサい。マッドマックスじゃないんだから、なんでも爆音にすればいいってもんじゃねーぞ。
せっかくのジメジメした雰囲気が爆音で台無しです。
また、せっかくのジャンプスケアも爆音の後だと効果も半減です。ジャンプスケアは、怪異が出そうな場所を恐る恐るのぞいたら、いなかった、で安心して後ろを振り向いたら突然怪異が現れビックリ!といった心の隙を突いてくるもの。お化けが出るぞ、お化けが出るぞと効果音で煽っておいて、ほら出たー怖いだろーじゃ、こちとらガードをがっちり固めてるから、全く効きません。バカなの?
- 呪いを描く力量不足
目に見えない恐怖を楽しみにしていたのに、ミイラ男みたいなのがワーッと出てきてゲンナリ。
呪いとか怨念とかじゃないの?呪物による逃れられない不幸を描くんじゃないの?目に見えない恐怖を描き切る力量がないので、ミイラ男に逃げたようにしか見えなかったです。
こんな扱いじゃミイラ男に失礼です。とりあえずモンスター出しときゃ客は怖がるだろうという浅はかな安っぽい魂胆がスクリーンから滲み出ていました。
とりあえずお前出とけよと便利屋感覚で引っ張り出されたミイラ男が哀れで映画に集中できませんでした。
- ごめん、坊主は見分けがつかないや
寺が舞台だから仕方ないですが、坊主がたくさん出てきて見分けがつかず大混乱。親切な坊主なのか、いじめっ子の坊主なのか、死んだ坊主なのか、チンプンカンプン。
坊主をたくさん出すことでイケメン俳優を際立たせようという汚い大人達の魂胆かも知れぬとドス黒い感情が巻き起こり映画に集中できませんでした。
あと主人公のイケメンの髪型は始終バッチリ決まってたけど、あれはドライヤーでセットしてるんでしょうか?夜になったら発電が終わる山奥で?そもそも寺にドライヤーって備え付けられているのかしら?だってみんな坊主頭なのに…
坊主とドライヤーの謎で頭がいっぱいになり、映画に集中できませんでした。
- イケメンがミスキャスト
映画冒頭では、タイの独特の不穏な湿った空気が漂い、これは!と前のめりになりましたが、場面が変わり、自閉症的な役のナチュラルイケメンの出現で、一気に不穏な雰囲気が吹き飛んでしまいました。
さらに、ナチュラルイケメンに絡むように爽やかイケメンも登場。さらなる爽やかな風を吹かせ、多少なりとも残っていた湿った空気も吹き飛ばします。
さらにさらに、ワイルド系のイケメンまで登場し野性的な心地よい風を吹かせます。
これがトドメとなり、「不穏な空気」も「湿った雰囲気」も「嫌なことが起きそうな静かな不安」もすべてすべて吹き飛んでしまいました。
残ったのはイケメンと坊主とミイラ男です。つまり、彼らの巻き起こした風に吹き飛ばされた後に残ったものは、絶望的な退屈です。
モンエネ缶をぐっと握りしめて、退屈と戦うことに必死で映画に集中できませんでした。
しかし、アジア系ホラーとイケメンって相性悪いですね。「ミンナのウタ」もひどかったことを思い出します。しかし、あっちのほうがまだ観れたのは、マキタスポーツが出ていることで画面にバランスが取れたことが大きいでしょう。
フンパヨンのリメイクを撮るのならば、自閉症の彼をイケメン設定にするのは、妥協するにしても、「母なる証明」のウォンビンをあの時のまま使っていただきたい。その上で探偵的な役割を担う主人公には山の中でも髪型バッチリでない、加齢臭漂う髪ボサボサの中年男性を配置し、彫刻家のワイルドイケメンの代わりに怪しげな老婆でいいんじゃないかな。そして、寺でなくて村の設定にして、小坊主はなしで。それだけで60点ぐらいの作品になると思います。
まとめ
イケメンとアジア系ホラーは相性最悪であることを再認識させてくれたありがたい作品です。
タイホラーがこの路線で進んでいかないことを願っています。
同じTホラーでも「呪詛」を生み出した台湾ホラーに期待かな。今月は「呪葬」の公開も控えてますしね。
しかし、モンエネは効くね。